デンマークの人は、なぜか国旗が大好きです。庭に国旗用ポールをそなえている人も多く、祝祭日、王族の誕生日、個人の記念日など、何かと機会を見つけては、赤に白十字のダネブローを風になびかせています。
なんでも、この国旗、かつて天から舞い下りてきたとか。1219年6月15日、エストニアへ遠征中のヴァルデマー2世のもとに、天から旗が降ってきて、その旗を手に王は戦いに勝利した、と伝えられています。もしこの伝説が正しければ、ダネブローは世界最古の国旗であることになります。この伝説は、おそらく古代ローマのコンスタンティヌス大帝が、312年の戦いの直前に天に十字形の幻と「汝これにて勝て」という文字を見た、という話と結びついて生まれたのだろう、と推測されています。また、デンマーク王のもとに落ちてきた旗は、実は血に染まった白旗だったのだ、とする説もあります。ひとつはっきりしているのは、ダネブローが14世紀にヴァルデマー3世の紋章として取り入れられた、ということです。
ところで「ダネブロー」とは、“デンマーク人の布”という意味です。当初は、もっぱら国王と海軍だけの旗でしたが、しだいに商船などにも用いられるようになり、1854年には個人での使用も認められました。
|
 |
| 長方形の国旗 |
 |
| 燕尾形の国旗 |
ダネブローには、いくつかの種類があります。よく知られているのは長方形のタイプです。赤の色調は定められていませんが、デンマーク人なら、見れば正しい色かどうか分かる、と言います。
燕尾形の国旗もあります。これは、長方形のものよりも濃い赤をしています。この種類の旗は15世紀以来知られていて、国・王室・海軍で使用されています。王室の旗は中央に、軍の旗は左上の四角の中に、それぞれ紋章が入っています。個人は、特別な許可がないかぎり、この燕尾形のダネブローを使うことができません。
このほかに三角旗の国旗もあります。ただし、これはダネブローとは呼ばれていません。寸法については、長方形や燕尾形の旗には、きちんとした規定があるのですが、三角旗の場合、いつも職人が作っている寸法だ、ということ以外には分からないそうです。
国旗の掲揚には、ちょっとした規則があります。ダネブローは、日の出の後に揚げ、日没とともに降ろします。夜間に掲げていると侮辱になるそうです。旗は地面に触れないようにします。なお、三角旗は24時間いつでも揚げることができます。
デンマーク人はこの国旗をこよなく愛し、誇りに思っています。クリスマスツリーやバースデーケーキにも小旗を立てますし、商店の広告でもよくダネブローを用います。サッカーの試合で顔に国旗を描いたのはデンマーク人が最初だとも言われます。でも、こうした熱狂があまりナショナリズムにつながらないのが、いかにも平穏でデンマークらしいところです。